普通の主婦が書き下ろしたシナリオがなんと百友映画に!
普通のおばさん、いやいや主婦が山口百恵と三浦友和に囲まれる?
東宝のドル箱に定着した百友映画
ゴールデンコンビと呼ばれた山口百恵と三浦友和の共演映画は必ず大ヒットする。
それが当時の映画界の常識であった。
「伊豆の踊子」に始まった百友映画≠フほとんどは文芸作品の映画化。
だが、東宝は新たな試みに臨んだ。
昭和54年8月に公開される10作品目となる百友映画のシナリオをなんと一般公募≠オたのだ。
東宝に送られてきた応募作品はなんと1万1千編を越えた。
1万人を越える人間がシナリオを完成させ、送ってくる。
締切に間に合わずに挫折した人間はその100倍はいると推定される。
クイズに答えて景品をゲットしよう!的なお気楽な応募ではない。
仮にもシナリオ≠フ応募なのだ。
まさかこれ程多くのシナリオが送られてくるとは東宝自身も予想していなかったに違いない。
昭和54年の日本の経常収支は大幅悪化傾向を続けるとともに、為替レートは円安傾向を強めていた。
この景気悪化の引き金となったのが、まさに百友映画のシナリオの一般公募だったと言われている。
「自分が書いたシナリオが百恵ちゃんの映画に・・・」
妄想に取り憑かれた者が大量発生。
仕事や家事を放り出し、書いたこともないシナリオ作りに没頭する夢見る大人が後を絶たなかった。
社会と経済は混迷に陥った。
世界を圧倒していた日本の労働力が急激に失われていったのだ・・・
だが、当選者の発表をもってその混乱も収まった。
当選した作品は「ホワイト・ラブ」
「ホワイト・ラブ」
原作者は名古屋在住の中川美知子さん。
なんと、29歳の普通の主婦。
「まさか当選するなんて・・・。賞金でオーブン・レンジを買います」
それまでの中川美知子さんは本当に普通の主婦をしていた女性で、オーブンレンジは欲しくて欲しくて、でも手の届かない高価な物だったのだ。
受賞者に贈られる賞金は100万円なので、もっと良い物も買えたはずなのだが、突然降って湧いてきたような大金。使い道がわからなかったのだろう。
その上、「ホワイト・ラブ」の制作記念発表会にはほぼ主賓扱いで招かれ、山口百恵と三浦友和に囲まれて祝杯をあげた。
華やかな舞台の中心にあって際立つ地味さがこの事件の大きさを物語っている。
この映画の製作費には1億5千万円が投じられ、そして8億6000万円の配給収入を記録した。
平凡な主婦が億≠ニいう単位のお金を動かすほどのムーブメントを巻き起こしたのだ。
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